寄稿

民間企業派遣研修制度「株式会社 電通」での広報実務研修を終えて

学務部入試課入試第三係 佐 藤 多 恵

 このたび,電通北海道との包括的連携協力協定に基づき,民間企業派遣研修員として平成17年4月から平成18年3月まで1年間,電通本社(東京)に派遣していただきましたので,その概要等を報告させて頂きます。
 私が参加したのは,電通の中では20年以上も歴史がある「官公庁職員社外研修生制度」であり,他(ほか)に6名(県職員2名,市役所職員2名,陸上自衛隊1名,海上自衛隊1名)参加者がいました。
 研修は概(おおむね)ね3ヶ月ごとに区切られており,最初の3ヶ月間は,電通が行っている様々なビジネスの事例をもとに広報・広告全般について学びました。次の3ヶ月間は,研修出張を含めながら実際の電通の現場を見せていただき,半年目以降は1つの局に2週間,1ヶ月間のスパンでひとつの局(新聞局,営業局等)に席をおかせてもらって実務の様子を見せていただきました。最後の3ヶ月間は,主に「大学ブランド」について学びました。1ヶ月間,電通でそのようなことを担当している局に席をおかせてもらって,大学だけでなくいろいろな民間企業の事例を見せていただいたりしながら個人的に研究をしました。
 最初の3ヶ月間,基本的には電通の社員の方々から講義を受けてレポートを提出していましたが,時には商品を売るための企画書を作成(あくまでも課題演習ですが)してプレゼンテーションを行うようなこともありました。講義の中で特に印象的だったのがCMの講義でした。例えば缶コーヒーのCMだったら,ビジネスマンに出勤して会社についた直後に飲んでもらうために,朝のニュースの中でたくさん流し,通勤途中で手にとってもらうような工夫をしているといったことでした。「CMは商品を売るための一手段にすぎない。ただ良いCMを作るだけではダメで,どのように実際に消費者に見られ,その結果売上を伸ばすという当初の目的にどこまで貢献したか,という一連の流れを総合的に見て判断しなければならない。」アンケートやイベント等にも同じことが言えるのですが,現状では手段を目的化していてその後につながらないケースばかりだということも聞きました。テレビのCMに限らず,新聞,雑誌及びインターネットに至るまで,世間の目に触れるものは全て戦略的に考えて作られていることを知り,人は見えない誰かが操作している世の中で生きているのだと感じました。
 研修出張では,様々な土地へ赴き,その土地の観光資源等を発掘して全国的に知名度を高めるためのワークショップに参加しました。訪問先は山口県,長崎県等合計4カ所で,ワークショップに参加する方も県職員や市職員に限らず,観光協会の方や旅行関係の経営者等と多岐に渡っていて,全く違う環境で働いている方々と同じことを考え,議論することはとても新鮮で興味深いことだと思いました。
 知名度をあげるための作業で大変だと思ったのは,「何を」をその土地のウリとするかだということです。そしてその際に,あまりにも自分の住んでいる土地を愛しすぎていてはダメだということを感じました。「どこがこの土地の名所ですか」という問いに「あれもこれもいいんです。全部名所です。」といったような返答をされると,よそから来た私は,「どれも似たような所が全国にあるのであまり魅力を感じないな,これで売ってもたぶん埋没してしまうだろうな…」と思ってしまい言葉に詰まることが多々ありました。
 そのような返答をされる方は,概して生まれてから一度もその土地を出たことがないというケースが多く,発言に客観的な視点が欠如していると感じました。「ひとりよがり」になってしまってはいけない,誰がこの土地を選ぶのかという「外」の視点を忘れてはいけないということを数々のワークショップに参加する中で学びました。
 実際に電通社内のひとつの局に席をおかせてもらって実務の様子を見せていただいた時,本当に打ち合わせが多い所だと思いました。電通に派遣される前,私は北大内で会計の仕事に就いていたのですが,朝から晩まで帳簿やシステムと向き合っていた時とは全く対照的でした。電通は,自分たちで「物」を作っていなく,在庫がゼロなのにあのような大きいビルを建てることができるのは,この多くの打ち合わせの中で生まれる「物事」なのだと思いました。営業局の方から「人の話を聞いて正確に理解することが一番大事。優れたヒアリング能力を身につけた人が成功していくのですよ。」ということを聞き,基本的なことだけれど自分の中では欠けている部分だなと感じ,気をつけていかなければいけないことだと思いました。
 最後の3ヶ月間で大学ブランドについて学んだとき,「ブランドコンサルティング室」という所に席を1ヶ月間おかせてもらいました。その時点で,大学ブランド醸成として世間一般に認識されている事例が少ないため,主に民間企業の事例を勉強しました。少し方向が違うのですが,私が興味を持ったのは,不祥事で地に墜(お)ちてしまった企業の事例でした。現在,CSR(企業の社会的責任)やリスクコミュニケーションといった単語が世の中を飛び交っていますが,そのはしりとなった事例を見て,何が原因となり,その結果どうなったのかを見ていくことが,今までに学んだことがないことだったのもあったせいか,とても興味深いことだと思いました。
 「不祥事をおこして堕ちる企業は,平家物語の最初のくだりと同じですよ。『おごれる人も久しからず〜たけき者も遂(つい)にはほろびぬ』です。今も昔も,思い上がった態度をとり続けていると,たとえ相当高い地位まで上り詰めたとしても,足元をすくわれてしまうのです。」というお話を聞かせてもらいましたが,このことは民間企業だけではなく,あらゆる団体にあてはまるのではないかと思いました。
 大学ブランドに関しては,「質のよい学生は,質のよい大学にしか集まらない。よい学生を集めたいのならば,まずは大学自体がよくなる努力をしなければならない。自分で綺麗(きれい)になる努力もせず,テレビの前でお菓子をほおばりながらセレブになりたがっているような女性はダメなのと同じです。」と,胸が痛む例のもとに教えていただいたことがありましたが,『外に求めるよりまず内を磨け』という言葉をきいて,北大も今のところそうなのではないかと思い,最終的に1年間の研修報告として発表したことが,まず北大の内部を活性化させ,風通しのよい組織をつくるという案でした。
 この1年間の研修は,広報の勉強というよりもむしろいい人生勉強になったな,というのが素直な感想です。他人の話をよくきき,魅力的な言葉を操り,たくさんの利益をあげる電通という企業に身を置いて研修できたことは,本当によい経験になりました。そして,東京という今までに暮らしたことのない土地での生活も,全てが新鮮でまるで夢のような毎日でした。ここで得た貴重な知識や経験を,これからの職務に存分に活(い)かしていきたいと思っています。このような貴重な経験をさせて下さった北海道大学,電通北海道及び電通本社の方々に心より御礼申し上げます。

電通東京本社ビルがある汐留のビル群 研修出張にて他の研修生達と
電通東京本社ビルがある汐留のビル群 研修出張にて他の研修生達と

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